▶ 新築編
Q1.建物を新築したのですがどのような登記手続きが必要でしょうか?
家を新築しました。登記しなければならないと聞きましたが。どのような手続をすればよいのでしょうか。
A 建物を新築した場合、所有者は1ヶ月内に建物の表示登記を行うよう不動産登記法に定められています。表示登記というのは、不動産の現況を明らかにするためにされる登記です。建物の場合ですと、その所在地、地番、家屋番号、種類、構造、床面積、所有者の住所氏名等を登記簿に登記します。
この表示登記は、各種ある不動産登記の中で一番最初に行う登記で、売買登記も、抵当権設定の登記も、まず初めにこの表示登記がされていないと行うことができません。建物の表示登記には、所有権を証する書面として、工事請負人による建物工事完了引渡証明書(印鑑証明書付)や建築確認通知書等が必要です。
ところで、建物の敷地が借地の場合、本来は地上権や賃借権の登記をしないと借地権を有することを第三者に主張できません。ところが、借地借家法により、地上権や賃借権の登記がなくても借地権者が建物を登記しておけば、第三者に借地権を有することを主張できるとなっています。しかも、この登記は今述べました表示登記で宜しいというのが最高裁の判例ですので、ぜひ活用したいものです。
Q2.受験勉強のためにプレハブ住宅を建築しましたが、登記することはできるでしょうか?
子供の受験勉強のために6畳のプレハブ住宅を建築しましたが、登記することはできるでしょうか。
A ダムの建設現場や道路工事現場などでプレハブの事務所や現場宿舎を見かけます。これらの大半は、ベニヤ板や軽量鉄骨でできており、土台(基礎)は丸太を地中に打ち込んだ簡単なものです。現場の工事が終わると解体され、撤去される建物です。しかし近年では、プレハブの材質も改良され、物置などばかりでなく一般の住居用にも広く利用されるようになりました。
従って一般的にはプレハブが建物であることには異論がないところですが、不動産登記法上は、建物として登記できるには次の3つの要件を謁たすことが必要です。
1.屋根および周壁など外気を分断するものを有すること。
2.土地に定着したものであること。
3.その目的とする用途を果たし得る状態にあること。
以上の用件から、丸太の上にプレハブを乗せ容易に取りはずしができるものは登記できないことになるわけです。したがって、お尋ねのプレハブ住宅が基礎工事かきちんとしてあり永続性があると認められれば建物として登記することができます。
Q3.床面積の定め方について?
私は、住宅金融公庫の融資を受けて家を新築したいと考えています。住宅金融公庫の場合、住宅部分の床面積に応じて金利が変わると聞きましたが、建物の床面積はどのようにして定めるのですか。
A 木造住宅の場合、建物の床面積は、各階ごとに壁の中心線で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、1平方メートルの100分の1未満の端数は切り捨てます。ここで、注意しなければならないことは、建物の構造によっては、床面積に算入しない部分もあるということです。
たとえば、天井の高さが1.5メートル未満の地階、及び屋階(特殊階)は、床面積に算入しません。ただし、1室の天井の一部が高さ1.5メートル以上の場合は、その1室全部を床面積に算入します。また、建物の一部が上階まで吹き抜けになっている場合には、その吹き抜けの部分は、上階の床面積に算入しません。出窓は、その高さが1.5メートル以上のもので、その下部が床面積と同じ高さにあるものは床面積に算入します。
住宅金融公庫の融資金利については公庫のホームページをご覧ください。
Q4.設計図より登記面積減少しているのですが?
新築後、建物の表示登記をしました。しかし建築確認を受け、設計通り完成しているものの、設計上の床面積(出窓と併用車庫部分)と登記上の床面積が相違(減少)しています。なぜでしょうか。
A 登記のために建物を調査すると、こういうことはよくあります。この原因は、建築基準法と不動産登記法とでは床面積の算出基準が違っているためです。建築確認図面(確認通知書に添付)や建築設計図面などでは床面積に算入されていても、不動産登記法上床面積に算入されないものに、玄関ポーチ、ベランダ、出窓、吹き抜け、屋外階段などがあります。
ご質問の件ですが、出窓が床面より高い位置にあつたか、高さが1.5m未満であったのではないかと思われます。併用車庫部分は、構造上一体で車庫として利用されていても、車庫部分を囲んでいる壁が二方向しかないような場合には、外気分断性に欠け不動産登記法上床面積には算入しない取り扱いになつています。
Q5.建築確認通知書の図面とは違った建物を建ててしまったのですが登記はできますか?
A 建物の登記は現況主義ですので、登記することは可能です。しかし、登記できたとしても、建築基準法に適合しなければ違法建築物になります。
この場合、事前に建築基準法に適合しているかどうか検討する必要があります。もし適合していれば、建物の設計変更の届けを出さなければなりません。その上で登記するとよいでしょう。
建築基準法に適合していない場合は、改修しなければならないこともあります。さらに、住宅金融公庫等の融資を受ける場合は、面積の制限に抵触することもあり融資を受けられなくなることもありますから注意が必要です。
Q6.ビニールハウスの登記は必要でしょうか?
私はメロン栽培農家で、栽培用のビニールハウスをいくつか所有していますが、このビニールハウスも登記する必要がありますか。
A ビニールハウスは、一般的に登記できません。登記できる建物の要件についてはここをご覧ください。
ビニールハウスについて、この要件に照らして考えてみましょう。
1.については、ビニールが屋根および周壁として、外気を分断していますが、ビニールという材質上永続性に問題があります。
2.の意味は、容易に移動できない建物、言い換えれば、強固な基礎を有する建物を指しますが、ビニールハウスは一般的に地面に鉄パイプを突き刺しただけの構造となっていますので、土地に定着した建物とはいえません。
3.については、温室という目的は、十分に果たしていると思われますので問題ないでしょう。
以上の点から総合的に判断すると登記できる建物ではないということになります。また、同じ温室でも屋根および周壁にガラスを用いた物は、強固な基礎を有していれば建物と認定され登記できます。
Q7.店舗付き住宅を夫婦別々で登記したいのですが?
妻と共同で店舗付き住宅を建設中です。妻のための店舗ですので店舗を妻、住宅を私の所有として登記したいのですが。
A 1棟の建物は本来、1戸の建物として登記するのが原則ですが、分譲マンションのように各室ごとに登記できる建物もあります。このような建物を区分建物といいます。区分建物として登記するためには建物の各部分が「構造上の独立性」と「利用上の独立性」を兼ね備えるものでなければなりません。
「構造上の独立性」とは、建物のほかの部分から独立していなければならないということで、隔壁、階層などによって、ほかの部分と完全に遮断されていなければなりません。従って、建物の区分線の一部が壁であっても、ほかの個所がふすまや障子などで区分しているだけで自由に行き来できるものは、構造上の独立性を有するものとはいえません。しかし、木製の扉やスチールシャッターで区切られている場合は、構造上の独立性を有すると認められることもあります。
「利用上の独立性」とは、独立した住居、店舗として利用できるものでなければならないということです。建物の種類に応じて最小限の設備が設けられていることが必要であり、ほかの部分の設備を利用しなければ生活できないようなものは利用上の独立性は認められません。また独立した出入り口を備えているか否かも重要な要件です。ほかの建物部分を通らなければ外部と行き来できない部分は、利用上の独立性がないとされます。
以上の要件を満たしていれば区分建物として登記できますが、そうでなければ一棟の建物全体を共有の建物として登記することになります。いずれにしても融資を受けた場合には、その金融機関の条件や税法上の関係もあるため、事前に土地家屋調査士へ相談されることをお勤めします。